太宰治の『ヴィヨンの妻』(新潮文庫)に収録されている『桜桃』、『家庭の幸福』の感想。
まず、『桜桃』。
親も一人の人間であり、弱い存在である。
そのことを無視して、あるいは嘘をついて、『親は子供を大事にする存在』と偉そうに構えてはいけません、正気に生きましょうという太宰からのメッセージ。
とにかく正直で、嘘や誤魔化しを嫌悪する太宰の姿勢が、私は好き。
次に、『家庭の幸福』。
『官僚が悪い』から始まる作品。
ある役人が『家庭の幸福』のために割り切った対応をしたことで一人の女性が死ぬ。
この話を通じて、太宰は諸悪の根源は家庭の幸福にあると結論付ける。
太宰が家庭の幸福を『諸悪の根源』と位置付けるのは、嘘や誤魔化しが家庭から始まるからである。
人間の生活は家庭から始まるのであるから、家庭の幸福においても正直であらねばあらぬ。
両作品とも、嘘や誤魔化しに対する太宰らしい潔癖さが感じられて、好感を持った。
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